「いいねより、返信のほうが評価される」。SNSの運用ノウハウには、こうした数字を伴う説明がよく出てきます。
2026年8月、X(旧Twitter)がその数値を追加で公開しました。確認すると、いまも一部の解説で使われている数字は、2023年時点の古い版のものでした。テクノロジーメディア『innovaTopia』への寄稿記事をもとに、事業者の方向けに要点を整理します。
いま見かけるXの数字は、2023年のものかもしれません
xAIは2026年8月13日、Xの「おすすめ」欄を動かすプログラムを追加公開しました。どの行動をどれだけ重く見るかという数値が、そのまま書かれています。
公開された数値は、次のとおりです。
・リンクをコピーして共有 20.0 ・返信 5.0 ・投稿者をフォロー 4.0 ・リポスト 1.0 ・いいね 0.5 ・通報 −234.0
一方、解説記事で見かけるのは「返信は13.5」「通報は−369.0」といった数字です。これは2023年4月5日時点の旧版に載っていた値です。現行版では、返信が5.0、通報が−234.0となっています。
公開されているプログラム(xAI「x-algorithm」)はこちらです。 https://github.com/xai-org/x-algorithm
なお、公開されている値は「主要な本番の値」に合わせていると説明されています。ただし一部の利用者には別の設定で試験が行われているため、全員に同じ値が使われているとは限りません。
数字が独り歩きするとき、抜け落ちるのは定義のほうです
公開の直後、「通報1回はいいね468個分に相当する」という読み方が広まりました。234を0.5で割った数字です。
翌14日、xAIはこれを誤りとする注記をプログラムの中に書き足しました。
この数値が掛かる相手は「その人がその行動を取りそうな確率」であって、実際に何回その行動が起きたかではありません。通報が起きる確率は、いいねの1000分の1以下です。数値を大きくしないと予測が点数に反映されないため、絶対値が大きくなっている、という説明でした。
旧版でよく引かれる「12.0」も同じです。これは単純なプロフィールのクリックに付いた数値ではありません。「プロフィールを開いたうえで、投稿にいいねまたは返信をする確率」に対する数値でした。
現行版では、単純なプロフィールのクリックは0.0です。ただし別の指標なので、12.0から0.0に下がったとは読めません。
数字は運ばれやすく、その数字が何に掛かるのかは運ばれにくい。ここに誤解が生まれます。
古い情報が残り続けるのは、書き手の怠慢ではありません
2023年に公開された旧版のプログラムは、いまも消されずに残っています。しかも、旧版は2つあります。
「返信13.5」などの数字が載っているのは the-algorithm-ml のほうです。旧Twitterの推薦システム全体を公開した the-algorithm は、別のものです。
GitHubのStar(利用者が付ける支持の印)を2026年8月19日に確認しました。the-algorithm が約7万4千、現行版が約3万2千、数字の出どころである the-algorithm-ml が約1万です。
数字の出どころ自体は目立たなくても、旧版はいまも現行版より多くの支持を集めたまま残っています。そこへ3年分の解説記事が積み上がり、それを読んで書かれた記事がさらに積み上がります。
生成AIに尋ねた場合も同じです。モデルの知識の時点や検索機能の有無によっては、旧版の情報を参照することがあります。回答そのものより、出典と日付を確認することが必要です。
「必須ではない」と公式が言っている項目もあります
古い数字を避けることと同じくらい、公式が「必須ではない」と説明している項目を知ることには意味があります。
YouTubeは公式のヘルプで、次のように述べています。
・毎日または週1回以上の投稿は必要ない。投稿の間隔と、公開後の視聴回数の伸びに相関は見られなかった ・通常の動画では、公開の時刻が長期的な成績に影響するかは分かっていない ・タグは重要ではない ・チャンネルの地域設定は、おすすめに影響しない
出典は、YouTubeヘルプの「YouTube のパフォーマンスに関するよくある質問とトラブルシューティング」です。 https://support.google.com/youtube/answer/141805
ただし、同じページには例外も書かれています。公開の時刻は、ライブ配信やプレミア公開では重要とされています。普段より投稿の頻度が下がることも、おすすめ経由の視聴が減る理由の一つに挙げられています。
「影響しない」と一括りにはできません。それでも、必須とされていない項目が分かれば、力の入れどころを選べます。
なお、ここで挙げた数値はXの、否定の説明はYouTubeのものです。Instagramについては、行動ごとの重みを実数値で一覧にした公式資料が、2026年8月19日時点では確認できません。仕組みはそれぞれ別に作られているため、片方で読んだ話をもう片方に持ち込まないことが大切です。
数字を見たときに確かめる3つのこと
情報の真偽を一つずつ調べるのは現実的ではありません。版の違い、定義の違い、プラットフォームの混同を減らすには、次の3点の確認が有効です。
1 いつの情報か 出典の日付を見ます。日付がない解説は、それだけで判断を保留する材料になります。
2 何に掛かる数字か 今回Xが公開した数値は、行動の回数ではなく予測される確率に掛かります。「◯回分」という換算を見たら、おおもとの資料で定義を確認します。
3 どのプラットフォームの話か Xの話なのか、Instagramの話なのか。別のプラットフォームの情報が混ざっていないかを確かめます。
まとめ
SNSの運用でご相談をいただくとき、まず整理しているのは「やめていいこと」です。
古い数字だけを根拠に運用を続けると、いまの仕組みとずれた施策に時間を使うおそれがあります。順位やリーチをお約束することはできませんが、確かめられる情報とそうでない情報を分けるところから、ご一緒できます。
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