AIに自社のことを覚えさせたら、次の壁が見えた

「Instagramの投稿を書いて」と打ったら、20秒で文章が出てきた。

料金も住所も正しい。文体も指定通り。問題は、その次に起きた。


やってみたこと

顧客ごとにAIの設定を作る、という仕組みを試しています。

会社の情報、サービスと料金、大切にしていること、言葉づかいの決まり、書いてはいけないこと。これらをファイルにまとめて、AIに読ませておく。そうすると、AIが「その会社の担当者」として書くようになるはずだ、という発想です。

まず自社で試しました。

結果は想定通りでした。料金は税込3,500円と正確に出て、住所も一字一句合っている。「当社」「弊社」を使わず主語を省略する、という指定も守られていました。ハッシュタグの数も、Instagramの上限30個に対して8個と自己申告している。

ここまでは、うまくいったと言っていい状態です。


ただ、冒頭が弱かった

出てきた投稿の書き出しは、こうでした。

スマホをかざすと
Googleの口コミ投稿画面が開きます。

説明としては正確です。ただ、Instagramで最初に表示されるのは30文字程度しかありません。その30文字で読むかどうかが決まる場所に、機能の説明が置かれている。

そこで、こう指示しました。

冒頭2行が説明的すぎます。
Instagramは最初の30文字しか表示されないので、
もっと引きのある書き出しにしてください。

返ってきたものは、期待以上でした。

A案とB案の2つを提示し、それぞれ30文字で切れる位置を実際に表示してくる。「A案は読み手の困りごとから入るぶん引きが強く、B案は商品の姿が一目で伝わります」と、選ぶ材料まで添えられていました。


そこで気づいたこと

この指示、お客様は思いつくだろうか。

「Instagramは最初の30文字しか表示されない」という知識があって、初めて出てくる指示です。それを知らない人は、出てきた文章を見て「なんかしっくりこない」と思っても、何をどう直せばいいか言葉にできない。

そして、たいてい2つのうちどちらかになります。「まあいいか」でそのまま投稿するか、使わなくなるか。

これは、AIの精度の問題ではありません。使う人が、直し方を知らないという問題です。

道具の性能を上げても解決しません。そもそも指示を出せない人が使う前提で、設計されていなかった。


設計を変えた

2つ足しました。

ひとつ。冒頭は最初から2案出す。

指示されてから出すのではなく、1回目の出力時点で選択肢を提示する。30文字で切れる位置も一緒に示す。そうすれば、使う人は「どちらが読みたくなるか」を選ぶだけで済みます。判断はできるが、指示は思いつかない。ならば判断だけさせればいい。

もうひとつ。改善余地を自分で申告させる。

「写真があると伝わり方が変わります」「業種によっては別の書き方が自然かもしれません」といった弱点を、AI自身に報告させる。気づけない人の代わりに、気づいたことを言葉にしてもらう。


もう一度試した

指示なしで、冒頭2案が出るようになりました。

そして自己申告のほうは、想定していなかったものまで拾ってきました。「掲載許諾のあるお客様の写真素材が使えるかご確認ください」という提案が出たのです。設定に書いておいた許諾済みリストを読んで、実在する素材を勧めてきた。

さらに「新規の方に届けたい場合、フィード投稿よりリールのほうが向いています」という、依頼していない改善提案まで添えられていました。


分かったこと

AIが正確に書けることと、使う人が使いこなせることは、別の問題です。

今回の検証で確かめたかったのは前者でした。会社の情報を正しく引けるか、文体を守れるか、法的にまずい表現を避けられるか。それはできていた。

けれど、それだけでは道具として成立しません。使う人が判断できる形で出力されなければ、結局は使われなくなる。

AIで文章を書くツールは、すでにいくつもあります。ただ、多くは「きれいな文章が出ること」を競っている。実際にその文章を媒体に載せて、修正指示を受けて、直して、また出す。その往復を何千回とやってきた人間から見ると、足りないのは文章の質ではなく、直し方が分かることでした。

「Instagramは30文字で切れる」も「冒頭で読むかどうかが決まる」も、日々記事を書いていなければ出てこない発想です。逆に言えば、それを知らない人が使うことを、最初から想定できていなかった。

自分で使ってみなければ、この壁には気づけませんでした。仮説では出てこない種類の発見だったと思います。


この取り組みは、サービスとして提供しています。

「うちの会社でもできるだろうか」と思われた方は、LINEからお気軽にお声がけください。実際の画面をお見せしながら、ご説明します。

なお、この記事は私が書いています。
うまくいかなかった部分を書きたかったので、そこはAIでなく人が書くべきだと判断しました。

▼ LINEで相談する https://lin.ee/oFD1KD6

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この記事を書いた人

デジタルとリアルの交差点をつくる

合同会社デジタルの窓口 代表
山本 達也(ヤマタツ)

兵庫県姫路市を拠点に、WebディレクションやAI活用支援をはじめ、多岐にわたって活動しています。IT専門メディアのテックライター・AIナビゲーターとしては、生成AIやエージェンティックAI、サイバーセキュリティ、宇宙開発といった最先端テクノロジー領域を中心に、これまでに累計約4,500本の記事を執筆してきました。

ウェブ解析士やデジタル推進委員としてのデータに基づく専門的な視点を持つ一方で、ハイブリッド型ビジネス交流会「クロストーク」の代表も務めています。オンラインの最先端テクノロジーだけでなく、オフラインの「人と人との繋がり」や地域のコミュニティを大切にし、デジタルとリアルの両面から起業家や企業の皆様に伴走するスタイルを得意としています。

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