キャッシュレス決済を導入したものの、「PayPay残高」が何なのかまでは意識せずに使っている方は多いと思います。実はPayPayの残高には性質の異なるものがあり、銀行口座へ引き出せるものと、原則として現金に戻せないものがあります。理由はサービスの都合ではなく、法律の側にあります。お店として知っておきたい仕組みを整理しました。
PayPay残高は、法的な性質で大きく2つに分かれる
同じアプリの同じ画面に並んでいますが、根拠となる制度が違います。
PayPayマネーは、金融機関の口座へ払い出せます。PayPay株式会社が第二種資金移動業として提供している残高です。
PayPayマネーライトは、原則として払い出せません。資金決済法上の「前払式支払手段」にあたります。商品券やプリペイドカードと同じ区分です。
お客様が「残高を現金にしたい」と言ったとき、できる場合とできない場合があるのは、この2つが混ざっているからです。どちらにあたるかは、お客様ご自身にアプリで確認していただくのが確実です。
現金に戻せないのは、性格が変わってしまうから
前払式支払手段は、商品やサービスの代金をあらかじめ支払う仕組みです。
ここで自由に換金や払戻しまでできるようになると、お金を送る手段としても使えてしまいます。前払式支払手段としての性格そのものが変わってしまうわけです。
制度を検討した金融庁の資料では、出資法上の「預り金」にあたる疑いや、いつでも引き出せる預金に近い機能を持つ可能性も論点になりました。こうした議論を経て、現在の資金決済法では払戻しを原則として禁止し、一定の場合にだけ例外を認めています。
商品券が現金に戻せないのと、根っこは同じです。「不便な仕様」ではなく、そういう制度設計になっているとご理解ください。
利用者のお金の守られ方も違う
前払式支払手段では、一定規模を超える発行者に、未使用残高の一部を保全する義務があります。PayPayマネーライトでも、法律に基づく保全措置が取られています。
資金移動業では、利用者に対する債務などから算定した必要額を、全額保全する仕組みです。
同じアプリの残高でも、保全のルールが異なります。
「デジタルの円」は他にも増えている
最近、円建てのステーブルコインという言葉を目にする機会が増えました。「JPYC」がその代表です。
1JPYCが1円として発行され、日本円に償還できます。発行会社は第二種資金移動業者にあたるため、取り扱う為替取引には1回あたりの上限があります。
以前に「JPYC Prepaid」という払戻しのできないトークンがありましたが、現在のJPYCとは別のものです。混同されやすいので、あわせて押さえておくと安心です。
では、お店として今すぐ対応が必要かというと、そこは急がなくてよいと考えています。
流通している量は、まだ小さい水準にとどまります。日本全体のマネーストックと比べると、桁がまったく違います。
お客様から聞かれたときに答えられる程度で、いまは十分だと思います。
まとめ
お店の実務として押さえておきたいのは、次の3点です。
- PayPay残高には、現金に戻せるものと戻せないものがある
- 戻せないのは、前払式支払手段としての性格を保つために制度が引いた線である
- 円建てステーブルコインは登場しているが、規模はまだ小さく、急いで対応する必要はない
決済まわりの仕組みは、調べ始めると制度の話に入り込んでいきます。お店として何をどこまで知っておけばよいのか、判断に迷われたときはご相談ください。

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