EmDashを触ってみましたが、お客様のサイトは移しません

Xで「WordPressはもう要らない」という投稿を見かけました。同じころ、Cloudflareが公開したCMS「EmDash」の名前も目にするようになりました。

実際に触ってみました。結論から書きます。

目次

お客様のサイトを移す予定はありません

面白いものでした。設計にも学ぶところがありました。ただ、いま運用しているホームページを移す判断にはなりません。

理由は2つです。開発元自身がまだベータと位置づけていること。そして、壊れたところから元に戻す作業を、こちらでまだ試していないことです。

順に書きます。

開発元自身が「ベータプレビュー」と書いています

EmDashが公開されたのは2026年4月です。当時のバージョンは0.1.0でした。8月に触った環境は0.35.0です。

4か月あまりで更新が続いていることになります。ただし、バージョン番号の増え方だけで完成度は判断できません。

見るべきは、開発元自身の表記です。公式のソースコード置き場には、いまも「ベータプレビュー」と書かれています。

お客様のホームページは、何年も使うものです。作った側が「まだベータです」と言っている土台に、運用中のサイトを載せ替える理由は、いまのところ見つかりません。

触ってみた印象は、悪くありません

EmDashには、インストールせずにブラウザーだけで試せる環境が用意されています。開くと10秒ほどで管理画面が立ち上がり、表示も日本語でした。ここは素直に感心しました。

作りにも独特の考え方があります。たとえば、記事を新規作成しても本文を書く欄がありません。「投稿には本文がある」という前提を置かず、必要な項目を自分で組み立てさせる設計です。

WordPressが23年かけて標準にしてきた形とは、出発点が違います。この発想自体は、知っておく価値があると感じました。

Cloudflareの環境が前提かというと、そうでもありません。公式の説明には、Node.jsという別の環境でも動くこと、データベースや画像の保存先にも選択肢があることが明記されています。特定の会社に縛られる作りではない、という姿勢は示されています。

判断を保留しているのは、復旧まで試していないからです

引っかかったのはここです。

まず、バックアップの仕組みはあります。管理画面から1回の操作でファイルとして書き出せますし、保存先と定期実行の環境を整えれば、毎日自動で取っておくこともできます。

書き出したファイルに入るのは、記事の中身、項目の設計、分類、メニュー、設定、更新履歴、画像の情報などです。一方で、ログイン用のアカウント情報や、画像ファイルそのものは含まれません。画像は保存先に残ったままで、書き出したファイル側には、参照を保つための情報が入ります。

戻す手段も、まったくないわけではありません。Cloudflareのデータベースを使っている場合は、指定した時刻の状態に戻す機能が備わっています。データベース全体を書き出して戻す手順も案内されています。

ただし、管理画面から書き出したファイルを使って戻す操作は、まだ用意されていません。公式の説明には理由も添えられていて、稼働中のデータを上書きする作業なので、ボタン一つで実行できるようにはしない、という判断だそうです。誠実な姿勢だと思います。この形式に対応した復元は、今後の予定として挙げられています。

そして何より、こちらでまだ試していません。実際にサイトを壊した状態から、自分の手で元に戻すところまで確認していないのです。

ホームページを預かる仕事で、いちばん怖いのは「戻せないこと」です。バックアップが取れているだけでは足りません。何かあったとき、自分の手で確実に戻せるか。そこを確かめてから採用したいと考えています。

移せるかどうかだけでなく、自分の手で戻せるところまで確認できるか。新しい道具を見るときは、そこを重く見ています。

それでも触っておく理由

移さないと決めたのに、なぜ時間を使うのか。

聞かれたときに答えられるからです。

「WordPressはもう古いらしい」「新しいCMSが出たと聞いた」。こうしたご相談は、実際にいただきます。そのとき「知りません」とも、「よく分からないので、やめておきましょう」とも言いたくありません。

触ったうえで、「いまは移さないほうがいいと思います、理由はこうです」とお伝えする。それが、ホームページを預かる側の仕事だと考えています。

半年後には、この判断が変わっているかもしれません。書き出したファイルからの復元が整ったり、いま用意されている復旧手段をこちらで検証できたりすれば、見方は変わります。そのときにまた触ります。

気になっていることを、お聞かせください

「うちのホームページ、そろそろ古いのでは」というご相談は、いつでもお受けしています。

新しいものに乗り換えることが答えとは限りません。いまのサイトを整えるだけで解決する場合もあります。まずは、何が気になっているのかをお聞かせください。

ご相談とお見積もりは無料です。

なお、EmDashを実際に操作した記録は、テクノロジーメディア『innovaTopia』に詳しく書いています。管理画面の画面写真も載せていますので、技術的な中身に関心のある方はそちらをご覧ください。筆者は同じです。

EmDashを1時間だけ触ってみた|本文欄のないCMS

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

デジタルとリアルの交差点をつくる

合同会社デジタルの窓口 代表
山本 達也(ヤマタツ)

兵庫県姫路市を拠点に、WebディレクションやAI活用支援をはじめ、多岐にわたって活動しています。IT専門メディアのテックライター・AIナビゲーターとしては、生成AIやエージェンティックAI、サイバーセキュリティ、宇宙開発といった最先端テクノロジー領域を中心に、これまでに累計約4,500本の記事を執筆してきました。

ウェブ解析士やデジタル推進委員としてのデータに基づく専門的な視点を持つ一方で、ハイブリッド型ビジネス交流会「クロストーク」の代表も務めています。オンラインの最先端テクノロジーだけでなく、オフラインの「人と人との繋がり」や地域のコミュニティを大切にし、デジタルとリアルの両面から起業家や企業の皆様に伴走するスタイルを得意としています。

コメント

コメントする

目次