「AIへの呪文」は、もう覚えなくていいのか

「この呪文を使えばAIがうまく動く」。そんな言い回しを集めている方は多いと思います。ところが2026年8月20日、AIを開発しているAnthropicが、そうしたコツの重要度は下がったと自ら発表しました。では、代わりに何を覚えればいいのでしょうか。無料で学べる場所とあわせてご紹介します。

集めるべきなのは「言い方」ではなくなりました

結論から書きます。

AIへの指示は、これからも必要です。変わったのは、覚えるべきことの中身です。細かい言い回しを集めることの優先順位は、はっきり下がりました。

こうした個別のコツは、AIが新しくなると入れ替わっていきます。

一方で「何を頼み、何を自分でやるか」という判断は、古くなりません。

開発元が「重要度は下がった」と書きました

2026年8月20日、Claudeというサービスを開発しているAnthropicが、自社のAI教育の考え方を公開しました。

そのなかに、こんな例が出てきます。

以前は、AIに文章を頼むとき「これは法務の同僚に向けた資料です」と読み手を伝えるのが有効でした。ところが今のAIは、その情報が必要なら自分から聞いてくるようになりました。だから、その一手をわざわざ教える価値は下がった、という説明です。

作っている会社が言っているので、ここは受け止めていいところだと思います。

同社は代わりに、こうした考え方を身につけてほしいとしています。

  • 今日のAIは、これから先で最も出来の悪いAIである(つまり、明日にはもっと良くなる)
  • 大事な用件ほど、しっかり確かめる

言い回しではなく、判断の基準です。こちらは、AIが新しくなっても古くなりません。

なお、この発表については、テクノロジーメディア『innovaTopia』でも記事を書いています。発表の中身をもう少し掘り下げていますので、背景まで知りたい方はこちらをご覧ください。

Claude Academy公開|Anthropicが変えた教材の背骨(innovaTopia)
https://innovatopia.jp/ai/ai-news/116513/

下書きはAI、承認は経営者

では、何を学ぶのか。

ひとことで言うと、下書きはAIに任せ、経営者が承認するという進め方です。

承認というのは、中身を確かめて「これで出す」と決めることです。書いた人ではなく、出すと決めた人が責任を持つ。社内の書類でふだんやっていることと、同じ形です。

Anthropicが挙げているのも、突き詰めるとこの形です。何をAIに任せ、何を自分の手元に残すのか。人に渡す前に、AIをどこまで使ったのかをどう示すのか。この2つは、承認する人が誰なのかをはっきりさせる作業にほかなりません。

たとえば、こういう分け方になります。

  • お客様へのお詫び文は、骨子を自分で決めてAIに下書きさせ、送る前に一字ずつ確かめる
  • 売上データの傾向はAIに眺めさせ、数字の正しさは自分の目で見る
  • ブログ記事の構成はAIと一緒に考え、自社ならではの部分は自分の言葉に置き換える

いずれも、最後に「これで出す」と決めているのは経営者です。

この形の良いところは、AIが新しくなっても崩れないことです。下書きの精度は上がっていきます。承認する側の役割は、むしろ重みを増します。

総務省の令和8年版情報通信白書によると、調査対象となった日本企業の86.4%が、何らかの業務で生成AIを使っていると回答しました。使うこと自体は、すでに珍しくありません。次に問われるのは、出したものを誰が承認しているのかです。

無料で学べる場所が2つあります

どちらもAIの開発元が公開しているもので、受講は無料です。

Claude Academy(Anthropic)
https://academy.claude.com

今回の発表の対象です。コースと短いチュートリアルが公開されています。ただし、現時点で確認できる教材は英語です。日本語版があるかどうかは公表されていません。ブラウザの翻訳機能を使いながら読む形になります。

OpenAI Academy(OpenAI)
https://academy.openai.com

ChatGPTを提供している会社の学習サイトです。日本語の案内ページも用意されています。
https://openai.com/ja-JP/academy/

受講にはChatGPTのアカウントが必要です。入門にあたる「AI基礎」は、60〜75分が目安とされています。修了すると証明書が出ますが、これはOpenAIの認定資格とは別のものだと明記されています。

面白いのは、この2社が同じ方向を向いていることです。OpenAI側の説明にも、指示を明確にすること、出てきたものを見直すこと、何を任せるかを決めること、そして仕事の主導権を手放さないことが並んでいます。

指示の出し方そのものは、どちらも教え続けています。変わったのは、そこに何を積み上げるかです。

まずは、ひとつの仕事で承認の線を引いてください

新しいコツを探すより、いま自分がやっている仕事を見渡すほうが先です。

そのなかで、下書きをAIに任せられるものはどれか。誰が最後に確かめて、承認するのか。ひとつの仕事で構いません。紙に書き出してみると、思ったより線が引けます。

デジタルの窓口では、AI導入と業務効率化のご相談を承っています。テクノロジーメディア『innovaTopia』では、生成AIやサイバーセキュリティを中心に、累計約4,500本の記事を書いてきました。公的機関が主催するAI活用セミナーでは、講師を10回以上務めています。

何から始めればいいか分からない、という段階からご相談いただけます。ご相談とお見積もりは無料です。

お問い合わせはこちら
https://digital-madoguchi.com/contact/

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この記事を書いた人

デジタルとリアルの交差点をつくる

合同会社デジタルの窓口 代表
山本 達也(ヤマタツ)

兵庫県姫路市を拠点に、WebディレクションやAI活用支援をはじめ、多岐にわたって活動しています。IT専門メディアのテックライター・AIナビゲーターとしては、生成AIやエージェンティックAI、サイバーセキュリティ、宇宙開発といった最先端テクノロジー領域を中心に、これまでに累計約4,500本の記事を執筆してきました。

ウェブ解析士やデジタル推進委員としてのデータに基づく専門的な視点を持つ一方で、ハイブリッド型ビジネス交流会「クロストーク」の代表も務めています。オンラインの最先端テクノロジーだけでなく、オフラインの「人と人との繋がり」や地域のコミュニティを大切にし、デジタルとリアルの両面から起業家や企業の皆様に伴走するスタイルを得意としています。

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