AIで作った文章、仕事に使って大丈夫なのか

AIで書いた文章を、仕事にそのまま使ってよいのか。海外でAI企業が訴えられているというニュースを見て、不安になった方からご質問をいただくことが増えました。訴えられているのはAIを開発した会社であって、使った人ではありません。ただし、使う側が何も気をつけなくてよい、という意味でもありません。文化庁が示している考え方とあわせて整理します。

目次

訴えられているのは開発した会社。ただし使う側の責任はゼロではありません

2026年8月28日、ソニーとワーナーの音楽出版社35社が、AI企業のAnthropicをアメリカの裁判所に訴えました。「Claude」というAIを作っている会社です。

この訴訟で被告になっているのは、Anthropicという会社と、その創業者2人です。Claudeを使って文章を書いた一般の利用者ではありません。

ただ、ここから「AIで作ったものなら使う側は何をしても大丈夫」とは言えません。

日本の文化庁は、生成AIについてこう説明しています。AIを使う場合は、使った人が元の作品を知らなくても、生成や利用が著作権侵害になることがある。AIを使わない場合とは、ここが違います。

つまり、開発側の裁判と、使う側の注意は、別の話として考える必要があります。

海外の訴訟では、何が争われているのか

今回の訴訟で問題にされているのは、データの集め方だけではありません。

訴状は、海賊版サイトから大量の本をダウンロードしたこと、歌詞を掲載しているサイトから無断で集めたこと、そのデータをAIの学習に使ったこと、著作権表示を取り除いたこと、そしてClaudeが歌詞をそのまま出力したこと。複数の段階を、それぞれ別の問題として挙げています。

背景には、2025年6月の別の裁判があります。

この裁判で、アメリカの裁判所はAnthropicが書籍をAIの訓練に使った行為についてフェアユースにあたると判断しました。一方で、海賊版から取得して保管していたコピーについては、同じ扱いにしませんでした。

AIの学習という目的だけを見て、すべての複製を同じように扱わなかった。取得や保管の経緯も、別に評価したわけです。

ここで注意していただきたいのは、これがアメリカの裁判所の、この事件についての判断だという点です。「本を買えばAIに学習させてよい」という一般ルールが決まったわけではありません。

日本では、使う側に何が推奨されているのか

文化庁は2024年7月、「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」という資料を公開しています。開発する側、提供する側、そして仕事で使う側に分けて、注意点を整理したものです。

仕事で使う側について、次のような項目が挙げられています。

  • 使おうとしているAIの仕組みと特性を理解しておく
  • そのAIの利用規約を確認しておく
  • 生成物を使う前に、既存の作品と似ていないか確認する
  • 生成しただけの段階と、実際に公開して使う段階では、判断が変わることに注意する

3つ目の確認方法として、資料はインターネットでの文章検索や画像検索を挙げています。

4つ目は見落としやすいところです。社内の下書きとして使うのと、ホームページやチラシに載せるのとでは、判断が変わります。

なお同じ資料には、これらをすべて実施すれば法的責任を問われないという意味ではない、とも書かれています。あくまでリスクを下げるための項目です。

実務で気をつけたい3つのこと

上記を踏まえて、日々の運用で意識していただきたい点を3つに絞ります。

1. 公開する前に、特徴的な一文を検索してみる

AIは大量の文章を読み込んで作られているため、覚えた文章をほぼそのまま出してしまうことがあります。今回の訴訟でも、歌詞がそのまま出力できた点が争われています。

出てきた文章の中で、特徴的な一文を検索してみてください。同じ文章が既にどこかにあれば、その場で気づけます。

ただし、検索で見つからなかったから著作権上まったく問題がない、と断定できるわけではありません。

2. 他社のキャラクターやロゴを安易に使わない

AIに「人気キャラクター風」のイラストを描かせて販促物に使う、という使い方があります。

AIを使ったかどうかに関係なく、他社のキャラクターやロゴを無断で使えば、著作権や商標権などの問題になる可能性があります。AIで描き直したから自由に使える、ということにはなりません。

もう一点。文化庁は、作品名やキャラクター名といった固有名詞をAIへの指示に入れると、元の作品を知っていたと推測される材料になると説明しています。指示の書き方にも注意が要ります。

3. 事実の部分は、必ず人が確認する

これは著作権とは別の話ですが、実務上いちばん事故が多いところです。

AIは営業時間や住所、料金といった事実を、もっともらしく間違えます。しかもその間違い方が自然なので、読み流すと気づきません。

お店の情報、価格、日程。この3つは、AIに書かせたあとで必ず人が確認してください。

怖がって使わない、という選択も避けたいところです

日々の投稿やホームページの下書きにAIを使うこと自体は、いま止める理由はないと考えています。

大事なのは、そのまま出さないことです。AIが書いたものは下書きであって、完成品ではありません。

少なくとも、ここで挙げた3つは日常的に確認しておきたい点です。加えて、仕事で使う場合は、利用しているAIサービスの規約も一度読んでおくと安心できます。

なお、個別の事案が著作権侵害にあたるかどうかの判断は、弁護士など専門家にご確認ください。ここで書いたのは、いま何が起きていて、どこに気をつけるとよいかの整理までです。

AIの使い方から相談できます

デジタルの窓口では、AI導入と業務効率化の支援を行っています。公的機関が主催するAI活用セミナーの講師も、これまで10回以上務めてきました。

「AIを使ってみたいが、どこまでやっていいのか分からない」という段階からご相談いただけます。ご相談とお見積もりは無料です。

参考
文化庁「AIと著作権について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

デジタルとリアルの交差点をつくる

合同会社デジタルの窓口 代表
山本 達也(ヤマタツ)

兵庫県姫路市を拠点に、WebディレクションやAI活用支援をはじめ、多岐にわたって活動しています。IT専門メディアのテックライター・AIナビゲーターとしては、生成AIやエージェンティックAI、サイバーセキュリティ、宇宙開発といった最先端テクノロジー領域を中心に、これまでに累計約4,500本の記事を執筆してきました。

ウェブ解析士やデジタル推進委員としてのデータに基づく専門的な視点を持つ一方で、ハイブリッド型ビジネス交流会「クロストーク」の代表も務めています。オンラインの最先端テクノロジーだけでなく、オフラインの「人と人との繋がり」や地域のコミュニティを大切にし、デジタルとリアルの両面から起業家や企業の皆様に伴走するスタイルを得意としています。

コメント

コメントする

目次