お客様に「JPYCで払えますか」と聞かれたら

大阪府と大阪市が2026年8月26日、新しい金融サービスの実証実験4件に補助金を出すと発表しました。そのうち3件が、ステーブルコインを使った決済です。姫路のお店に今すぐ関係する話ではありません。ただ、実は私の財布にもJPYCが入っています。お客様から「JPYCで払えますか」と聞かれる日は、いつか来るかもしれません。そのときに慌てないための3つのことをまとめます。

目次

今のところ、答えは「対応していません」で大丈夫です

まず結論からお伝えします。

JPYCを店頭で受け付けているお店は、まだ限られています。断っても失礼にはあたりませんし、お客様も「ですよね」で終わります。

大阪府の実証実験も、府内の一部の店舗や商業施設を対象にした、期間を区切った試みです。兵庫県内のお店が今すぐ何かを準備する必要はありません。

ただ、その次の一言で印象が変わります。

「知らないです」と「うちはまだ対応していません」は、言っていることは同じです。でも前者は情報から取り残されているお店に、後者は考えたうえで決めているお店に聞こえます。

この記事は、後者の言い方ができるようになるためのものです。

知っておきたい3つのこと

1つめ。JPYCは、日本円と1対1で発行・償還されるように作られています。

発行元では、日本円1円と1JPYCを1対1で発行・償還できるようになっています。値上がりを狙って持つものとは、性格が違います。

こうしたものをステーブルコインと呼びます。JPYCは日本円に連動するタイプです。

法律上は「電子決済手段」という区分で、ビットコインなどの暗号資産とは別に整理されています。名前が似ているので混ざりやすいのですが、支払いに使うことを前提に作られたものだと思ってください。

2つめ。払う側はスマホのウォレットです。お店側にも、受け取る仕組みが要ります。

お客様のスマホにJPYCが入っていても、お店側に受取用のウォレットや決済サービスがなければ、支払いとして成立しません。QRコード決済と同じで、両方がそろって初めて使えます。

だから「うちは対応していません」で話は終わります。お客様が悪いわけでも、お店が遅れているわけでもありません。

3つめ。日本円建てのJPYCは、2025年10月に発行が始まったばかりです。

まだ1年経っていません。受け付けているお店を探すほうが難しい状況です。

大阪府の実証実験も、これから使えるようにするための試験段階です。決済に関する3件は、2026年10月から2027年3月にかけて予定されています。

JPYCの仕組みについて詳しくは、発行元の公式サイトをご覧ください。 JPYC株式会社 https://jpyc.co.jp/

実は、私の財布にもJPYCが入っています

大阪・関西万博で使われていた「EXPO2025デジタルウォレット」というアプリが、2025年10月31日に「HashPort Wallet」という名前でリニューアルされました。万博で集めたトークンやSBTと呼ばれる記録は引き継がれ、あわせてJPYCが扱えるようになっています。

運営会社によれば、EXPO2025デジタルウォレットは万博会期中に累計約100万ダウンロードを達成しました。それだけ広くダウンロードされたアプリが、万博終了後にHashPort Walletへ引き継がれています。

人に送るのには、使っていました。

「短い落語大会」という会をXで開いていたころ、演者への投げ銭に使ったことがあります。その場で、思った額を送る。それだけです。ただし当時使っていたのは、現在のJPYCとは別の仕組みで発行されていた旧JPYCです。

私自身、ブロックチェーン上で人から人へ価値を送る体験は、そこで知りました。ただ、人への送金と、お店での決済は別です。店舗では、受け取りや日本円での清算まで含めた仕組みが必要になります。

リニューアルの内容は、運営会社の発表に記載されています。 株式会社HashPort「万博会期後に『EXPO2025デジタルウォレット』のメインアプリとweb3ウォレット領域が『HashPort Wallet』にリニューアルへ」 https://hashport.io/news/app_renewal_20250825_01

なぜ今、この話が出てきているのか

行政が動き始めたからです。

大阪府と大阪市は共同で、ブロックチェーンやAIなどの技術を使った新しい金融サービスの実証実験に補助金を出す制度を、2026年度に作りました。1件あたり最大1,000万円です。

初年度の応募は12件、交付が決まったのは4件でした。そのうち3件が、店舗や商業施設などでの決済の実証です。

そして交付が決まった1件が、先ほどのHashPort Walletを運営している会社でした。

利用者がステーブルコインで支払い、お店側は日本円で清算を受けられるようにする仕組みを試すそうです。実施は2027年1月から3月、場所は大阪府内の小売店やレストランとされています。

万博で広く使われたアプリがあって、そのアプリの会社が、大阪のお店で使えるようにする実験をする。そういう順番で話が進んでいます。

東京都も2026年4月から6月にかけて、似た趣旨の補助金を募集しました。民間の取り組みはすでに各地で動いていますが、そこに東京都や大阪府・大阪市が予算を付けて後押しを始めた、という段階です。

すぐ普及するとも、必ず普及するとも言えません。ただ、しばらくニュースで見かける機会は増えそうです。

大阪府「令和8年度『大阪府先駆的金融市場等形成支援事業補助金』の補助事業を決定しました」(2026年8月26日 報道発表。採択事業の一覧もこのページから確認できます) https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o020060/prs_51190.html

大阪市「先駆的金融市場等形成支援事業補助金について」 https://www.city.osaka.lg.jp/keizaisenryaku/page/0000685899.html

東京都産業労働局「ステーブルコイン社会実装促進事業補助金」 https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/gfct/initiatives/nurturing-players/fintech/stablecoin

それより先に、確認したいことがあります

新しい決済手段の話が出るたびに、同じことを思います。

その前に、やっておくことがあるのではないか。

たとえば、Googleマップに表示されるお店の営業時間は、今の営業時間になっていますか。定休日は合っていますか。電話番号は古いままではありませんか。

お客様が「今日開いてるかな」と検索したとき、そこに出る情報が古ければ、その方は来ません。JPYCで払えるかどうか以前の話です。

順番があります。まず、地図を整えるところから。

新しい技術を追いかけるのは、そのあとでも遅くありません。

まとめ

お客様に「JPYCで払えますか」と聞かれたら、こう答えれば大丈夫です。

「うちはまだ対応していません」

そのうえで、3つのことを覚えておいてください。

  • JPYCは、日本円と1対1で発行・償還されるように作られている
  • 払う側と受け取る側の両方に、ウォレットや決済の仕組みが要る
  • 2025年10月に始まったばかりで、受け付けているお店はまだ限られる

これだけ知っていれば、会話は成り立ちます。

Googleマップの情報が古いままになっていないか、この機会に確認してみてください。デジタルの窓口では、Googleビジネスプロフィールの設定を50,000円から承っています。ご相談とお見積もりは無料です。

もし導入を考える段階になりましたら、そのときはご相談ください。

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この記事を書いた人

デジタルとリアルの交差点をつくる

合同会社デジタルの窓口 代表
山本 達也(ヤマタツ)

兵庫県姫路市を拠点に、WebディレクションやAI活用支援をはじめ、多岐にわたって活動しています。IT専門メディアのテックライター・AIナビゲーターとしては、生成AIやエージェンティックAI、サイバーセキュリティ、宇宙開発といった最先端テクノロジー領域を中心に、これまでに累計約4,500本の記事を執筆してきました。

ウェブ解析士やデジタル推進委員としてのデータに基づく専門的な視点を持つ一方で、ハイブリッド型ビジネス交流会「クロストーク」の代表も務めています。オンラインの最先端テクノロジーだけでなく、オフラインの「人と人との繋がり」や地域のコミュニティを大切にし、デジタルとリアルの両面から起業家や企業の皆様に伴走するスタイルを得意としています。

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